近年増加する平屋住宅の市場と訴求の特徴

1.平屋住宅は地域性の強い商品

 近年、戸建住宅の需要が減少する中、平屋住宅は、増加傾向にある。
戸建住宅全体に占める平屋住宅の割合は、2016年度8.4%から2019年度15.4%(約60,400棟)に上昇している。
 特に、地域別の平屋比率を見ると、特徴がより分かりやすい。最も高い地域は、九州(30.1%)、次いで、四国19.6%となっており、総じて都市部は低く、地方部は高い傾向が見られる。これは、土地価格と関係が深く、地方部であるほど土地価格が安いため、ゆったり広い敷地に平屋住宅が建てられるためである。

<地域別の戸建住宅に占める平屋の割合>

北海道東北北関東首都圏北信越東海近畿中国四国九州
11.5%11.2%19.5%3.7%10.4%9.1%4.7%12.7%19.6%30.1%
※出所:住宅産業研究所(確認申請ベース)

2.平屋住宅のメリット多数

 平屋住宅の需要増加とともに、住宅会社では、平屋住宅が強く訴求されるようになってきた。訴求の特徴は、主に以下の3つがあげられる。

①平屋=1階建ではない
 平屋住宅と一階建は、少し異なる。各社、屋根裏のスペースを活かした「プラス一部屋」の訴求が見られる。例えば、各社のホームページを見ると「小屋裏による1.5階建(積水ハウス)」「“蔵”でまるで2階建!!(ミサワホーム)」という訴求が見られる。

②ワンフロアで「ラク家事」
 都市部での暮らしと比較して、「マンションの住みやすさを戸建で実現」など階段がないこと、内(家の中)から外が近いことなど、いわゆる「ラク家事訴求」(掃除がしやすい、洗濯もの干しがしやすい)が目立つ。特に、近年、都市部から地方・郊外への住替えが増加しており、シニア世代だけではなく若年世代にも魅力的な住まいの形となっている。

③外観デザインの良さ
 一昔前は、平屋住宅は、あまり外観シルエットが美しくないという印象があった。しかし、構法・技術の進化により屋根のバリエーションの豊富さにより、外観デザインの良さを訴求する会社が増えてきている。

3.お客様への訴求に一工夫を!

 新型コロナウイルスの影響により、書斎やテレワークの部屋、趣味の部屋など「プラス1部屋」のニーズが高まっている。また、地方・郊外への住替えのニーズも高まっている。工務店や地域の住宅会社も変わりゆく消費者のニーズを捉え、訴求を一工夫することで、販売のチャンスを生み出すことができる。